新品クラブが、時には中古品より安価で手に入るため、ゴルファーにも愛用者の多いインターネットのヤフーオークション(以下ヤフオク)。1円でも安く買いたい消費者心理を受けて、クラブの流通量も豊富になっているが、思わぬワナが潜んでいるので注意が必要だ。棚からボタモチ的な幸運を装った巧妙な「次点詐欺」の実状を探った。
景気低迷でクラブが売れないと頭を抱えるゴルフメーカーをよそに、ヤフオクのクラブ流通量が増えている。10月22日現在でその数、約8万3000本。新品、中古を含め玉石混交の数ではあるが、とくにこの季節は、
「新製品の発表ラッシュとなるため、ネットに独自の販路を持たないショップが、在庫調整のために赤字覚悟で個人出品するケースが増える」(ある大手ネットショップ)という。
型落ちの旧モデル新品は、店頭処分価格よりもさらに3万円以上も安い価格、場合によっては「1円」から入札がスタートする掘り出し物に入札も殺到している。無事に落札に成功すると、そこからは落札者と出品者の取引となる。
かつては、オークションの商品ページに、落札者のヤフーID(ヤフーのメールアドレスと共通)が公開されていたため、出品者になりすました第三者が落札者にニセ落札メールを送信して、金を振り込ませる「オークション振り込め詐欺」が多発した。
この対策として、ヤフオクは07年5月からメールアドレスを非公開のまま取引できる「取引ナビ」を完備。08年6月からはIDの一部を「*」で表示して隠し、「最近では振り込め詐欺の問い合わせ件数は激減している」(ヤフージャパン広報)という。
ところが、ゴルフ記者の1人は最近、「それでも詐欺の被害に遭いそうになった」と、ヒヤリとした経験を語る。
「定価10万8000円のアイアンセットを、ダメモトで4万5000円で入札して、あと一歩で落札できなかったのだが、翌日にヤフーメールに“出品者”からメールが来た」
出品者のハンドルネームで送られてきたメールは、落札者が家族の事故で入院費がかかることを理由に購入をキャンセルした、キャンセル料をもらったので記者の入札額よりさらに割引した4万3000円で送料込とすることが記されたものだった。記者が購入意思を伝えると、相手は次のメールで、住所、氏名、携帯電話番号などを明かし、「確認できたら振込先を知らせる」と記者にも同等の情報開示を要求し、続いて某ネットバンクの口座番号を知らせてきた。
「住所は出品者と同じ都道府県だったし、口座の名前も氏名と一致していたので、最初はラッキーだと思い完全に信用した。入金の直前に確認の電話をしたら、アカの他人につながって『同様の電話が殺到して困っている。詐欺ですよ』と言われ、冷や汗を流した」
このようにヤフオク外の取引に誘導し、金をだまし取る詐欺は「次点詐欺」と呼ばれる手口で、3年ほど前から流行。昨年6月の「振り込め詐欺救済法」施行により、金融機関に通報すると、該当口座を凍結し、残高が1000円以上であれば被害資金の返金を受けることができるが、「詐欺の場合、多くの口座は使い捨てで、すぐに出金されてしまう」(預金保険機構広報)ため、よほど早く連絡しない限り、被害救済を受けられる見込みは薄い。
次点詐欺を見分ける最大のポイントは、システム上は出品者が知りえないヤフーメール宛に、購入を持ちかけるメールが届くこと。ゴルフ用品は単価が高いため、詐欺のターゲットになりやすく、ヤフージャパンでは「方策を尽くしているが、『*』表示の部分に当て推量で文字を入れてメールを送信する手口となると根絶は難しい。『取引ナビ』を用いたヤフオク内での取引を利用して欲しい」と注意を呼びかけている。
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