弱冠18歳にして「模範的プロゴルファー」だったはずの石川遼の様子がこの頃おかしい。4位に食い込んで池田勇太を抜き、賞金ランク1位に返り咲いた三井住友VISA太平洋マスターズでは、石川らしくないシーンが度々見られたのだ。
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石川遼のイライラの原因は、いままでの自分を脱皮しようとする証!?
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ショットが悪いとため息まじりの大きな声を上げ、クラブを地面に叩きつける。世界ランク1位のタイガー・ウッズにも見られるシーンだが、ゴルファーのお手本であるべきプロとしては決してほめられる行為ではない。特にこれまでが「いい子」のイメージだった石川だけに「連戦のオーバーワークのせいでストレスがたまっているの?」と心配する声が渦巻いている。
今季はメジャーやWGC競技にも出場できたこともあり、8月の全米プロから太平洋まで15連戦中。さらにシーズン終了まで、あと2試合が控えている。さらに史上最年少の18歳の賞金王のタイトルがかかり、日本ゴルフ界を引っ張るスーパースターとしての重圧がずっとのしかかっている。並みの18歳ならば、とっくにパンクしてもおかしくないはずだ。
こんな石川を専門家はどう見るのか。臨床心理士として子どものメンタルケアも経験している精神科医で、北青山診療所の鷲見恵美子院長に聞いてみた。
「疲労からくるストレスもありますが、今の自分を変えることでより良くしたい、今までの自分に貼られていたレッテルからの脱皮したい気持ちがこういう形に表れるのかもしれません。集中力、忍耐力、体力、判断力を常に要求される状況は、超一流選手にとっても過酷です。ましてや18歳は発展途上。自分のスタイルを作っては壊し、作り直してゆくのはごく自然なことなのではないでしょうか」
似たような現象は、やはり連戦をこなして、初の賞金女王争いを続けている諸見里しのぶにもみられる。
「グチは言わないようにした」と言ってきいたのに、横峯さくらに追い上げられる苦しさからか、「賞金女王なんて……」と、ネガティブワードを連発してしまっているのだ。石川よりは年上とはいえ、こちらもまだ23歳。同様の現象が起きていても不思議はない。
ウッズをはじめとする、世界のトップ選手は、これほど続けて連戦をすることはまずない。国内でも年間を通じてフル参戦する選手はまれで、それを石川は必死でこなしてきているのだ。
脱皮してもう一回り大きくなるのなら、素晴らしいこと。だが、パンクしてしまっては元も子もない。心身のバランスを上手にとりながら、何とか最後まで戦い抜いてほしいものだ。
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