マスターズウィークの日曜日、週刊ゴルフダイジェスト誌特派記者のサラリーマントップアマの田村尚之氏のプレスルームの机に英語で書かれた1枚の紙が置かれていた。田村氏は「たいした連絡じゃないだろう」と無視していたら、事務局から呼び出された。「なにかマズいことしたかな」と訪ねると……。
世界中から集まったプレス関係者の中から抽選で十数名が、最終日の翌日、オーガスタのラウンドに招待される。なんと、僕、当たってしまったのだ。
嬉しいけれど、クラブを持ってきていない! 四方八方手を尽くし、なんとか知人のつてでクラブを借りられたのは、日曜夜11時過ぎであった。ボールは池田勇太の余りをもらった。
翌朝、「招待状」を提示し、マグノリアレーンから車で入場する。カメラマンさんが運転する車のスピードは、もったいなくて歩くほどのスピードになる。正面からクラブハウスに入ると2階に案内され、その奥の「MASTERS CLUB ROOM」に通される。
10畳ちょっとの狭い部屋だが、棚にはグリーンジャケットが飾ってあり、ここがメンバーズロッカーだろうか。スタッフが、ここを使えと木製ロッカーの扉を開けてくれる。着替えを済ませて扉を閉めても鍵もついていない。よく見るとその扉には「GARY PLAYER」と書かれたプレートが。おいおい、である。
今日一緒にプレーするのは、インドと日本のプレス関係者2名。うち1名は東京スポーツの記者。東スポといえば、かつて僕が日本オープンのローアマを獲った時、「田村は本紙愛読者だった! ××面を読んで精神修養?」と大々的に報じてくれた、ありがたい!?新聞社だ。
とりあえず彼らとクラブハウス2階で朝食をいただき、昨日まで選手たちが使っていた練習場で練習してからスタートとなる。いくら練習嫌いの私でも、ここでは真剣に練習せざるを得ない。
1番ティでスコアカードをもらってからスタート。さすがにティは最終日より多少前からではあるが、今年3回目のラウンドがオーガスタとは! 身震いを覚える。クラブが自分のものでないのが残念だが、そんなことはどうでもいい。
1番は2オン2パットのパーと無難な滑り出し。しかしこの後、大苦戦になろうとは。
アイアンはピン筋に入っていくが、距離がピッタリ合わないと、たちまちグリーン外にこぼれた。感動的なことにピン位置も最終日と同じなのだ。グリーン外からのアプローチは、どう寄せていいのかわからない。パットもしかり。
意外だったのは、グリーンに芝目が結構あること。また下りのラインは順目になっていることが多く、上からは果てしなく転がっていく。5番までに5オーバーとなり、難しい6番パー3でバーディを取ったものの、アウトは40。
インも相変わらずだが、特に印象に残ったのは12番と13番。試合中に定点観測した12番パー3は148ヤードを8番でフルショット。またまたピン筋に入ったが、手前のカラーに落ちて、ころころ戻って池ポチャ。やっぱりここは川に入れんといかんでしょ、と負け惜しみ。
ただ、小川にかかるベンホーガンブリッジを渡ると、そこは本当に美しい別世界が広がっておりました。
ミケルソンが3日目にイーグルを取った13番パー5。セカンドはフェアウェイセンターから残り198ヤード。4番アイアンを振り抜くと、またまたピン筋に入った。ベタピン、イーグルか。が、しかし、手前カラーに落ちてやはりハザードへ。
本当によくわかった、オーガスタではピン筋狙いこそ危ないのよ、って。
結局、インは43で、トータル83。でもスコアなんて関係ない。すべてが美しく、何をやっても楽しい、本当に夢の18ホールであった。まだ競技も始まってないのに、もう今年の運を使い果たしちゃったかも。
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