白熱した戦いが繰り広げられた今年の全米オープン。その一方で、舞台となったぺブルビーチゴルフリンクスのグリーンの見た目の悪さに、「あれ?」と思った人も多かったのではないだろうか。世界有数の美しいコースのグリーンがまだら模様とは。その原因を調べてみた。
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グリーンはまだら、微妙な凹凸ができていたが、パッティングにはほとんど影響はなかったという
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まず最初に驚かされたのは、グリーンに使われている芝が、ベントではなく、日本では雑草のひとつとして扱われている『スズメノカタビラ(以下カタビラ・学名poa anual、ポアニュア)』だったこと。
カタビラはペブルビーチのように夏でも気温が上がらず日照時間の少ない湿気の多い土地に適した芝で、スコットランドのリンクスなどでもよくグリーンに使われている。
それがまだら模様になったのは、ドライスポット(乾燥害)が原因だと指摘するのは、米国グリーンキーパーの最高資格(CGCS)を持つ小樽CC元グリーンキーパー・大江康彦氏。さらに、ゴルフダイジェスト社刊『ゴルフ場セミナー』で連載を持つアメリカの農学博士で、実際に全米オープンの視察に行ったマイカ・ウッズ氏も同じことを言う。
大江氏は現場を見ていないのでと断りながら、こう推測する。
「全米オープンにふさわしい高速グリーンに仕上げるため、水を撒かなかったのが原因。カタビラでもいろいろな種類があって、乾燥に強いものは緑色のままだが、弱いものは赤く焼けてしまう。それがまだらに見えた原因でしょう」
さらにウッズ氏によれば、環境問題を鑑みてUSGAが打ち出した、「農薬をできるだけ使わず、水の使用も抑える」という考えが反映されたこともまだら模様のグリーンを生む結果になった。
実際にプレーをしていたプレーヤーたちはこのまだらグリーンをどう思っていたのだろうか。
「欧米ではよくあるグリーン。プレーヤーはこういうグリーンに慣れているので何ら問題はなかったはず。ボールの転がりが跳ね気味だったのもカタビラだから仕方ない」とウッズ氏。
1992年から6年間、当時別会社でペブルビーチの現地責任者を務めていたPGMホールディングス社長・草深多計志氏は、
「今回は、まだら模様になることがUSGAからあらかじめプレーヤーに伝えられていたこともあり、クレームをつけた人はいなかった。それに実際のプレーでも、まだら模様はパッティングにほとんど影響なかったと聞いています」(草深社長)
全米オープン終了後、通常通りの水撒きを開始したところ、芝は急速に回復。現在は、本来の“緑”を取り戻しているそうだ。
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