最近、男子ツアーの有り様が変わった。少し前までビデオカメラ片手に、試合会場を縦横無尽に駆け回っていたプロコーチが、ほぼ姿を消したのだ。
海外ではポピュラーなプロコーチという職業が国内ツアーに定着したのは、13~14年前のこと。井上透や石渡俊彦が中嶋常幸の復活に一役買った数年後には、江連忠が片山晋呉や伊澤利光らを教え、内藤雄士が丸山茂樹のコーチとして米ツアー優勝に導いたことで、日本も欧米並みに、選手とコーチが二人三脚で戦うスタイルが確立された。ところが最近プロコーチをツアーに帯同する男子選手はほとんどいない。
「そうなんですよ。ふと気づいたら、毎週ツアーに来ているのは僕くらいになっていました」というのは、パナソニック優勝の平塚哲二やキヤノン優勝の久保谷健一らを指導する内藤雄士だ。トップアマでツアーでも活躍中の伊藤誠道や浅地洋佑ら有望ジュニアも育てている。
プロコーチの姿をツアーで見かけなくなった裏には、経済的事情が見え隠れする。プロコーチをツアーに帯同するには当然経費がかかる。ひとりのコーチに習うシード選手が数人いれば、経費を分担することも可能だが、手広く何人も指導するコーチは少ない。費用対効果を考えるとコーチの指導を受けても、ツアーに帯同させるまでの必要性を選手たちが感じなくなったというのがまずひとつ。
その一方でコーチ側にも事情がある。一般的に、プロコーチは選手側の獲得賞金に応じた報酬を受け取るわけだが、賞金の数パーセントだけで生活が成り立つかというとそうではない。有名選手を教えているというネームバリューが、一般アマチュアを教えるスクールやアカデミーの開校につながる。多くのコーチがツアー選手に帯同し、全国を飛び回って名を売る時代から、一般アマを教える時代へと転換したといえる。
最近男子ツアーでは、選手同士が教え合う「ジャンボ軍団」、「青木ファミリー」といったひと昔前のスタイルが復活しつつある。また「若い人はなんでもかんでも習おうとするけどそれはよくない。自分が苦労してつかんだもののほうが、絶対強いからね」(羽川豊)との言葉もある。
要は本人次第。いくら有能なコーチに習っても、それをいかすのは選手次第ということを皆が気づき始めたのかもしれない。
【関連記事】
2011/ 9/27 絶好調の笠りつ子。コーチ父が語る「大躍進の秘密は両わき締め」
2011/ 3/22 プロコーチ井上透、韓国研究の卒論が最優秀賞に
2010/11/23 絶不調の上田桃子が世界一めざしてスウィング改造中
|