WGCマッチプレーの"裏試合"のプエルトリコオープンで米ツアー初優勝を飾ったトニー・フィナウ。彼の経歴はユニークだ。
試合によっては、4日間の平均で330ヤード以上飛ばすこともあり、今季の平均飛距離314・7ヤードと米ツアーでもトップの飛ばし屋だ。今回が初優勝だが、アメリカではフィナウの名は意外とよく知られている。というのも彼を含めた"一家"が有名なのだ。
フィナウの父はトンガからの移民だが、同じくトンガから移住した弟の子、つまりトニーのいとこは、アメリカンフットボール、デトロイトライオンズで活躍する有名選手ハロティ・ンガタ。一族にはほかにも数名のアメフト選手がいる。また、昨年トニーが10位となった全米プロには、やはり親戚でプロバスケットNBAのスター、ミルウォーキー・バックスのジャバリ・パーカーが応援に来ていたこともあるなど、とにかく一族は"スポーツエリート"揃い。さらに有名なのは、米の下部ツアーで時折プレーしている弟のギッパーとトニーを育てあげた両親の話。
兄弟がゴルフを始めた当時、父親のケレピ氏は、ユタ州のデルタ航空の下働きとして深夜に働いていたが、ゴルフをするお金も知識もなかった。そこで、まずはリサイクルショップで6番アイアンを75セントで、パターを1ドルで購入し、図書館でジャック・ニクラスの「ゴルフ・マイ・ウェイ」をはじめとする書籍やビデオで独学し、兄弟にゴルフを教えたとか。パブリックコースの練習場で、チッピングやパッティングを無料で練習をさせ、ショットは家のガレージに小さな打席をつくり、約2メートル先のターゲットに向かって毎日練習させたという。
「子どもたちのショットが安定しているのは、ボールの行き先を気にすることなく、打つことに集中しているからだ」とケレピ氏は語る。
今年、30歳以下の優勝者は、ジョーダン・スピース(22)、ジェイソン・デイ(28)、松山英樹(24)、そして26歳のフィナウの4人だけ。そのなかでも、193センチ、90キロのフィナウはもっとも体格に恵まれている。プエルトリコオープンは"裏試合"だったが「最高のプレーヤーの集まる試合で優勝したい」と語るフィナウの夢が現実になるのは、そう遠くはなさそうだ。
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