腰痛で2月から試合に出ていない石川遼が「医師の診断を踏まえて、ツアーと話ができるようにしている」と、米ツアーの公傷制度を利用する準備を進めている。この公傷制度とは?
「メディカルエクステンジョン」と呼ばれるアメリカの公傷制度を現在利用しているのは、スチュアート・アップルビーやボブ・エステスなど10人。メディカルエクステンジョンはティム・フィンチェムコミッショナーが認可することによってのみ認められるとされているが、医師の診断書などを提出して申請すれば、ほとんど認められる。これが認められれば、復帰後、いわゆるシード権のフェデックスポイントと賞金ランキングの125位の次の優先順位で、試合に出場できることになる。試合数に制限はあるが、日本ツアーへの出場も可能だ。
米ツアーの公傷制度は手厚く、いわゆる休業期間の失業保険のようなものがあり、過去の成績に応じて、月に2000ドルから1万ドルが補償される。このため、かつてはこの制度を悪用する選手もいたとされ、以前は月に2万ドルまで支払われていたが1万ドルに引き下げられ、休業期間も3年間までになった。
復帰後は、そのシーズン中に規定のポイントや賞金を稼げば、もとのシード権を獲得することができる。例えば、米ツアー9勝のアップルビーの場合、昨年の春、腰の手術のためメディカルエクステンジョンが認められ、今季復帰したが、すでに13試合に参戦して34万ドル強を稼ぎ出している。しかし、もとのシードに戻るには、残り7試合で26万ドル弱を稼がねばならずハードルは高い。
2003年のマスターズ覇者、マイク・ウィアーはこの制度を利用していたが、消化試合数の間に規定の賞金やポイントを稼げず、今はさらに出場優先順位の低いマイナーカテゴリーに移行している。
もちろん、ケガをしても公傷制度を利用しない選手も多い。例えば、ジム・フューリックは、昨秋手首の手術をし、今年に入って棄権2回と、予選落ち1回という成績だが、昨年優勝して2年のシードがあるので、この制度を利用するとは思えない。かつて、デビッド・デュバルがメジャー優勝の5年シードを使いきった後に、この制度を利用して試合に出ていたが、この制度は、トッププレーヤーが、力が落ちてきた時に〝最後に切るカード〟といった印象がなきにしもあらず。若い石川には、しっかり腰を治して、実力で、シードを確保してもらいたいものだが……。
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