シニアツアー最終戦・いわさき白露シニアで初優勝したのは寺西明。アマ時代が長く遅咲きの新人シニアプロだが、そこには独特のゴルフ哲学があった。
寺西は同大会で初日トップに立つと、そのまま1打差で逃げ切り、完全優勝を果たした。最終ホール、70センチのパットを沈めての勝利だったが、ガッツポーズはなし。「あの70センチは人生の中で一番値打ちのあるパットでした。しかしあの緊張感を味わいたくてプロになったわけですから、プロ冥利に尽きます」(寺西)
寺西は兵庫県の明完企工という人材派遣業の社長で、30歳でゴルフを始め、49歳でプロになったという異色の経歴を持つ。アマ時代には関西アマ、関西ミッドアマの優勝の経験がある。同じような経歴に田村尚之がいるが、田村は日本アマ2位、日本オープンローアマなど輝かしい戦歴を持ち、プロテストも予選免除されての合格。寺西は1次予選から積み上げての合格と、いわば田村がエリートなら、寺西は雑草の強さ。ただ、それぞれのゴルフ哲学には常識から外れる共通性(?)もある。田村は「体調のいい時しか練習はせず、練習しにいっても調子が悪いとそれ以上打たずに帰る」と話したことがある。
他方、寺西のユニークなところは「頭を動かさないとか、左の壁をつくるとか、"止める"ところを排除して動きたいように動かす。練習場ではバランスよく動かすことだけ考え、本番ではそれさえ考えません」(寺西)。「ヘッドアップしない」「左の壁をつくれ」などのスウィングづくりの〝常識〟を破るような言葉が飛び出す。
また20代前半で始めたビリヤードはプロ級の腕前で、それがゴルフに大いに役立ったという。「ビリヤードはスピンをかけるゲーム。ゴルフでもどうスピンをかければ、ボールをインテンショナルに曲げられるか。全く同じですね」(同)
同大会優勝で来季のシードも決め、社長業との掛け持ち稼業、熟年ゴルファーに夢を持たせるシニアプロの誕生だろう。
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