ウェブ・シンプソンが圧巻のゴルフで“第5のメジャー"プレーヤーズ選手権を制したのはご存知のとおり。最終日、会場がピンク色に染まった(選手たちがウェアをピンクに統一した)母の日の勝利に「この1勝を母と亡き父に捧げたい」とシンプソンは瞳を潤ませた。
実は、シンプソンが12年に全米オープンに勝ったときも最終日は父の日だった。母&父の日勝利をコンプリートするとは敬虔なクリスチャン一家に育った家族思いの彼ならではの快挙である。
16年にアンカリングが禁止されてからの道のりは厳しかった。メジャーチャンピオンでありながら13年にツアー4勝目を挙げてから勝ち星に見離され、長尺パターをへし折ったこともある。だが昨年のプレーヤーズ選手権で同じく長尺を失い苦しんでいたティム・クラークのアドバイスで、右手をクローグリップにしたことで光明が差した。1年後、こうして結果を出したのだから感慨もひとしお。
そして彼にはどうしても勝ちたかった理由がある。それは昨年11月に他界した父の存在。自身の悲しみはもちろん、最愛の人を亡くし悲しみに暮れている母をなんとしても励ましたかった。
奇しくも大会がはじまる9日前、シンプソンは母デビーさんと久しぶりに2人だけで食事をする機会に恵まれた。滅多に会えないだけに話は弾み大いに笑い、父の思い出を語っては涙した。
「それがいいきっかけになった」(シンプソン)
息子が2日目に63をマークし、大量リードを奪っても母は気が気ではなかった。最終日はテレビ画面に文字どおり釘づけになって戦況に一喜一憂。その息子の耳にはラウンド中ずっと「諦めるな。ベストを尽くせ!」という父の声が響いていたという。
夫不在で迎えたはじめての母の日に孝行息子が捧げてくれた貴重な1勝。「本当に素晴らしいわ。神様の采配はとてもステキね!」と、デビーさんは涙、涙。優勝の裏には心温まるエピソードがあった。
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