69歳のトム・ワトソンが全英シニアオープンからの引退を表明。初出場は44年前。ジ・オープンの顔だった男の決断のワケは?
「道具箱のなかに良いプレーに必要なツールがなくなってしまった」と引退の理由を語ったワトソン。大会3日目のラウンド後「これが私にとって最後の全英になる」と宣言し、周囲をざわつかせた。
75年初出場で全英のタイトルを奪うと以降5回の全英オープン、3回の全英シニアオープンを制してきた。今回全英シニア優勝のベルンハルト・ランガーは「トムはリンクスの名手。強風や雨のなかでプレーするのがとにかく上手い。最強だった」と先輩に敬意を表した。
ワトソンにとってもっとも思い出深いのは77年ターンベリーでジャック・ニクラスとの激闘を制した試合だという。「(逆転勝利を決めると)ジャックが首に腕を回して『ベストを尽くしたが届かなかった。おめでとう。キミが勝って僕もうれしい』と言ってくれたとき一歩階段を上がった気がした」と振り返る。のちに『ターンベリー真昼の決闘』とうたわれたが、09年には同じ舞台でプレーオフに進出。しかし、敗れ「達成感?いや悔しさだけだよ」と59歳は無念を滲ませた。
競技から引退するわけではないが、今後については「風まかせ」。ウエスタン式馬術競技の一種である趣味のカッティングを楽しみつつ「膵臓ガンで闘病中の妻と一緒に闘う」とヒラリーさんとの時間を優先させる。カッティングも最初は妻が夢中になりワトソンが後追いでハマったという。「最後と決めていた全英で予選落ちしなくてよかった。ゴルフを知り尽くしたイギリスのギャラリーに迎えられて感動したけれど涙は出なかった。これからはもっと若い選手たちがゴルフファンを興奮させるようなプレーを見せてくれるはず」
「毎ラウンド、エージシュートがしたい」というレジェンドの飽くなき情熱と引き際は見事。
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