米女子ツアーのボランティアオブアメリカクラシックでルーキーのシャイアン・ナイト(22)が初優勝を挙げた。勝利の裏にあったドラマとは?
ウィニングパットを沈めた瞬間、家族や友人から盛大な祝福を受けたナイトは天に向かって両手を広げた。空から快挙を見守ってくれたであろう亡き兄と最良の瞬間を分かち合いたかった。手を天に差し伸べ、五感すべてで最愛の人に勝利を報告した。
兄・ブランドンが08年にこの世を去ってから11年が過ぎた。トラックを運転中逆走してきた車に衝突され兄は非業の死を遂げた。相手は泥酔していたという。
「今日はもうひとりのキャディ(兄)が寄り添ってくれていた気がします。きっと私を天国から見守ってくれていたのでしょう」ナイトはあふれる涙を抑えることができなかった。
アラバマ大学を卒業し挑んだ今シーズンは苦戦の連続だった。出場したほぼ半分の試合で予選落ち。最高位はウォルマートNWアーカンソーの29位タイ。大会前の賞金ランクは120位でシーズンが終われば再びQシリーズ(予選会)に逆戻りしなければならないと覚悟していた。
「とても苦しいシーズンでした。でも心ではこういう日が来ることを祈っていたのです。それが現実になった。素晴らしすぎて言葉になりません!」
フットボールに打ち込んでいた兄の背番号は33番。やがてそれはナイト自身のラッキーナンバーになった。ヤーデージブックにも「33」と記し、ショットを打つ前に必ずその数字を胸に刻んだ。奇しくも最終日にナイトがマークしたスコアは前半33、後半33の66。若くしてこの世を去った兄の気配を感じながらプレーした彼女にとってそれは偶然ではなく必然だったのもしれない。
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