台風15号の強風で鉄塔が倒れ、周囲の住宅が損壊した千葉のゴルフ練習場の現況は……。
9月9日の台風15号は、想定外というべき50mの強風で「市原ゴルフガーデン」の鉄塔13本をなぎ倒し、そばの27世帯ある住宅のうち16軒に甚大な被害を与えた。
最初、練習場側は弁護士を通じて「台風などの災害は補償しない」との声明を出したが、住民側やマスコミ、世論の批判もあり、その後11月24日に「経営は断念し、土地を売却し、その代金で補償金を支払う」とした。その前の15日からは倒壊した鉄塔の撤去も始まり、作業はすでに完了している。
しかし、なぜこれほど甚大な被害をもたらしたのか?
同練習場が開業したのは50年前で、その時はネット固定式が当たり前だった。ネットは風が網の間を通り抜けると思いがちだが、強風になると風は通り抜けず“壁"になるという。
このネットが下ろせないことが被害を大きくした。現在では、固定式は許認可されないが、当時はOKだった。そしてさらなる原因は鉄塔そのものが老朽化し、根元のボルトが腐食していたことという。だがまだ真因は解明されていない。
事故当初から現場を見続けてきたゴルフジャーナリストの小川朗氏は「実は5年前に鎌ヶ谷の練習場で鉄塔倒壊事故が起きています。それを他山の石としていれば……」と話す。
さて現状では、練習場側は土地を売却して補償金にあてるとしているが、その調整は中立的立場の弁護士が集う「災害ADR」が行う。ただ、これからの困難も予想される。
小川氏によれば、「更地にするのでしょうが、そのためには倒壊しなかった鉄塔も撤収しなければなりません。また、被害者といっても、それぞれの被害度が違い、交渉に応じるか、温度差もあります。何より原因を完全に究明することがゴルフ界全体のためにも必要だと思います」。
道はまだ険しく遠いといえるだろう。
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